降り来る言葉 LVII/木立 悟
三角を転がし
水草の涙
地に触れて立つ
ひとつの辺
近い蒼と
遠い青が混在し
指は糸をつまめずに
夜を見送る
静電気と水彩
誰もが踊りを咎めても
密かに激しく
互いの手を握る
標本の蝶が飛び去り
音の層は深く厚くなる
歌うものなく演じるものなく
ただ見つめるものの真上をゆく
山に重なる
山ではない山
道徳ではない色が流れ着き
手鏡のなかをのぞきこむ
片羽と片羽と片羽のむこう
朝と冬に分けられながら
粉の光は降りつづく
髪と唇に降りつづく
岩山をわたる曇の端から
雨や階段は落ちては砕
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