狐の嫁入り/冬野 凪
 
日刊ゲンダイ」


「走れメロス」口から飛び出し逃げ戻る


詩神は口ラッパがお上手


穴といふ穴から詩心が溢れ出る


寒椿昇天してよみがへり


主人公は僕だつたのか死ぬ間際に気付く


蜂飼ひを拐かしてはクローバー摘む


いつもとは違ふ道行く狐の嫁入り


淋しさを殴りつけては椿咲く


淋しさは鬼のかたちして現れる


寝る前にドアを少し開けてみる


淋しさをさかさまにして慰める


まばたけば電気が走る鉱泉水



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