不漁の石/天野茂典
 
  

  不漁の石は
  父が名づけた
  落款だ
  ぼくはいい名だと思った
  父が死んで
  30年以上がたつ

  ぼくは釣りはやらないが
  自分で書いた詩に
  いつもこの落款を
  押しつづけているようだ
  何にも釣れないで
  石を拾って帰るという
  それだけの意味だ

  きょうもぼくは
  不漁の石を押しつづける
  ことだろう
  父がそうだったように
  父の書は右肩上がりだった
  楽観しているつもりはない


             2004・11・27
 
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