追憶の岸辺/たにい
今日を生きることに疲れた心を連れて行ってあげる
追憶の岸辺には様々な物が打ち寄せられている
陽に晒されて白く乾いた流木の傍らに
幼稚園に母が持たせてくれた馬車の模様の小さな青いお盆
好きな先生に持って行った裏庭で摘んだ白い百合の花
丸っこい小石を這い回る船虫の横に
授業中に消しゴムを刻んで作ったサイコロ
透明な青いガラス壜の中には
誰にも見せなかった初めての詩
砂を掘ると埋めていた苦い思い出が湧いてきた
すぐ埋め直してお日様の匂いのする白い砂を掛ける
そして還って行こう すべてを忘れさせてくれる眠りのなかに
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