新しさを知ってゆく月を美しいと詠む國で/たちばなまこと
 

やわらかく
湿り気を帯びて
肌が
隙間なく
毛穴のおしゃべりを聞く
撫でつけるたびに
安まる鼓動
触れ合うたびに
高まる空
向かい合うたびに
新しさを知る
螺旋を登る
時の回廊
円周を延ばしながら
歩いていけたなら

藍色を呼ぶ月が登ったら
世界に呼吸を並べ
手をつないで
祈りを重ね
数え切れないほどの
龍をたてる
胸に浮かぶ肋骨に
人差し指でなぞる
厚みに腕を巻きつけて
声を押し当てる
不意に言うのね
爪をたてたいよ
いいよ
たてるといい
好きなだけ
刻むといい
月を美しいと詠む國で
新しさを知ってゆく
ふたりで
良かった




戻る   Point(26)