大手町 一二月/……とある蛙
 
道上を行き来する表情の無い群衆
曖昧な物を清潔感が包んだ無責任
掘割外堀に覆いかぶさる
首都高速の濃密な陰が投射する
大東京の中心付近の暗黒
暗渠と言って良い神田橋付近

神田橋を渡ると左右三本づつの
大小の銀杏の樹
銀杏は古木ではなく
樹皮も若々しい
しかも存在感は無く
上京したての大学生のように初々しい
道に沿って立っておらず
生き物としての主張が無い
涸れ掛けの観葉植物のように立っている。

車道には歩道を行き来する人より
遥かに大量の車両が行き来する
物言わぬ巨大な甲虫が
実は轟音を発する鋼虫で
ちっぽけな人間を食い散らかして
ちっぽけな人間の心
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