虚構の海域(転覆丸哀歌)/ただのみきや
さあ 帆を上げよ
出航の時が来た
一かけらだって未練を残すな
すべては過去の出来事だ
さあ 目を沖に向けろ
出航の時が来た
呼び止める声など幻想だ
港にわれらの取り分はない
さあ 海鳴りの音を聞け
早くも歓迎の嵐が来る
あの暗雲の真下こそ
われらの海への入り口だ
いざ行こう 勇敢なる乗り組みよ
絶望の石ころを胸に抱く
見限られ 見限った者たち
こころは死人の者たちよ
いざ進め 転覆丸
虚構の海域を目指し
波の咢を超えて行け
茫漠の海に咲く
ふりむくことのない
歌声を追いかけて
戻る 編 削 Point(2)