小説/葉leaf
婦なんですよ。ごらんなさい。――この金糸雀は私の記念に差上げます。せめて、あなたに奥さんがないのなら。――あなたには奥さんがある、私には主人がある、お別れしましょう。奥さんは仰しゃいましたね。
見ては奥さんを思い出すことが――。私は唯見るだけが役目でした。あの金糸雀は妻が世話していてくれたのです。昨年いただいた金糸雀が私に飼えなくなりました。
――お約束を破ってもう一度だけ手紙を差上げなければならなくなりました。奥さん。
(川端康成「金糸雀」を逆から読んでいる)
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