路地/はるな
ものすごく寒い夜だった、骨が凍って砕けそうに寒くて、おまけに雨が降り出していた。うすっぺらいブーツの中で足指がかじかんでもともと覚束ない足取りをさらに不自由にした。わたしはこごえて、空腹で、目がよく見えなかった。夜で暗かったしどこかにレンズを落としてきてしまったし、物事は奇妙に入り組んでいた。それはちょうど知らない古いまちなみの路地のようなもので、そこに住まう人々には何の障害にもならないが、でもわたしは異邦人だから。よく見えなかった。とにかくそれでも歩き続けた、走りたかったけど足が動かなかった。上下運動、かじかむ手と手を合わせてみても一向に温まらず、吐きかけた息の温みも手のひらまでの距離に堪えられ
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