V/イリヤ
 
存在とは他なるものが言表されるや否や、存在は、存在とは他なるものを出口なしの宿命のうちに幽閉してしまう。だが、この出口なしの宿命は、語られたこと le dit が語ること le dire に及ぼす支配によって生じたものではなかろうか。*5


はりつめたざわめきを静止する、かがよった息吹の、つららなる潤いに病み、滞り、翳った青春の、僕らの頬骨の硬ささえ、言葉にした端から液化して消えてゆく。シニフィエはシニフィアンとなり、語られたことは語ることへと遡る、幾世紀も醒め、色褪せた不眠症に瞼を痙攣させながら。たえまなく囀のは常闇のしじま。
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