北風の吹く丘(セミドキュメンタリー)/生田 稔
北風の吹く丘(セミドキュメンタリー)
1章
北に30度西に傾く家に在りて
父の眠る丘がある
京都の吉田山ほどもない
小さな丘だが
僕は此処に父が眠っている
と考えているこの丘に登ると
湖が遠景に
眺められ
父を思い悲しくなる
優しい親切をひとつもした
覚えはないが
僕の生活に必要な物は
全部まかなってくれた
懐かしい父であった
父はいつも書物を読んでいた
後ろ姿を思い出す
私にふさわしいような本は
少しも無かったが
部屋中書物の山であった
難しい本ばかりで
父の留守の時、二冊抜き読みした
一冊は漢字でもって英語を
表すもので、?を私はキユーン
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