通りすがりのひと/恋月 ぴの
かい合い
あけましておめでとうございますと手を合わせれば
いつもながらの正月を迎えることができた
※
年金の手続きにと取り寄せた除籍の住民票
父の名前
そして母の名前にも取り消し線が記されていた
あの家には誰もいなくなったんだ
そのときは、そんな感慨しか浮かばなかったのだけど
帰るところの無くなった正月を迎えようとして
改めて思うのは
ひとが生きることの意味
ひとが亡くなることの意味
みぞれ雪の波打ち際で
寄せては返す波間に揺れる母の面影
※
お寺さんからいただいた立派な母の戒名
ありがたくも我が身の至らなさを思い知らされ
こんなお正月もあるのかと
間に合わせの粗末な仏壇に向かって手を合わす
戻る 編 削 Point(32)