通りすがりのひと/恋月 ぴの
 
かい合い
あけましておめでとうございますと手を合わせれば

いつもながらの正月を迎えることができた




年金の手続きにと取り寄せた除籍の住民票

父の名前
そして母の名前にも取り消し線が記されていた

あの家には誰もいなくなったんだ
そのときは、そんな感慨しか浮かばなかったのだけど

帰るところの無くなった正月を迎えようとして
改めて思うのは

ひとが生きることの意味
ひとが亡くなることの意味

みぞれ雪の波打ち際で
寄せては返す波間に揺れる母の面影




お寺さんからいただいた立派な母の戒名

ありがたくも我が身の至らなさを思い知らされ

こんなお正月もあるのかと
間に合わせの粗末な仏壇に向かって手を合わす





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