ありがとう、ハニー/ホロウ・シカエルボク
 



ある、一二月の終わりの、例外的に寒い夜
おれは明日の仕事に備えて、はやく眠ろうとしていたところだった
消しゴムのついた歯ブラシでピカピカに歯を磨いて、寝床に戻ろうとしたとき
窓の外に、なにかが立っているのが見えた、二車線の車道の―センターラインに
女だった
枯れたなにかの花束を抱えて、おれの窓の方角を向いて、立っていた
血のように赤いコートを身にまとっていた
すでに血を吸っているかのように重たそうなコートだった
危ない、とおれは思った、その瞬間
猛スピードの一一トン・ダンプが彼女の身体を数メートルも上に跳ね飛ばし、彼女の身体はアイスバーのように回転し
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