蒼と冠/木立 悟
光の獣に
つまずき転ぶ
今日は左目の翳りの日
遠のく灰を
見つめていた
舌に降る雪の
水紋を聴いた
呼ぶ声はひとつ
呼ぶ声は六つ
冬かこむ冬
崩れかけた曲がり角を照らす
光はうつろへ
うつろへと吹く
水のなかを
振り返りながら
獣は進む
冬の星の群体が
ひとつの瞳にまばたいて
むらさきの下
身を寄せる森
光の射す方へ
指す方へ
わずかな道はのびてゆく
打ち消しあいながら
響きあいながら
遠まわりの軌跡は重なり
光も獣も追いぬいてゆく
蒼い氷の文字の冠
夜より高く左目にかかげて
戻る 編 削 Point(5)