ヘアー・トニック/
たもつ
床屋から戻ると少年はいつも
美しい母の鼻先に
散髪したばかりの頭を近づける
あら、大人のいい匂いね
それでも早めの夕食が終われば
母は仕事へと出かけていく
男の人のもっといい匂いを知っているのだろう
少年はぼんやり考える
初めて母が煙草を吸うのだと知った日
少年はもう幼くなかったが
いつの間にか覚えた
淋しい笑い方をした
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