賀春/ヨルノテガム
 






 さかなウオは宙空を飛翔し、
 そのウロコの窓から少女は
 口をあけて地球を眺め望みます
 ひとまわり大きくなるころに
 少女の瞳は星のネオンの棲み家となって
 着陸するのです


 *


 みかんを食べた
 ゆっくり噛んだ
 冷たくて柔かく
 もう無くなった
 みかんを食べた
 半分を食べた
 もう半分も食べた
 皮は実を忘れ ひらいた


 *


 うさぎが冬です
 寄り道した先が真っ白
 鳴き声は雪です
 誰も来ない道明かり
 月の住人の噂は
 しんしんと長い耳に
 積もりゆきます


 *


[次のページ]
戻る   Point(6)