ある映画祭/吉岡ペペロ
一体どうしてしまったと言うのだ
ぼくはきっと正直に生きすぎ
疲れきったたましい入りの
肉のかたまりだったのだろう
客席はすでに埋まりはじめていた
観客は老夫婦から家族連れまで
さまざまなひとであふれていた
ぼくがステージにあがるとみんなは
静まりゆく波のように落ち着いていった
現地の言葉で棒読みで挨拶をすると
観客の笑顔がひかりになり影になった
ぼくは泣きそうになりながら
センチメンタルを払い除けようとしていた
つまらないことなんてなかった
つまらないことなんてないんだよ
すべてのひとに語りかけたくなっていた
一体どうしてしまったと言うのだ
ぼくはきっと正直に生きすぎ
疲れきったたましい入りの
肉のかたまりだったのだろう
客席はすでに埋まりはじめていた
戻る 編 削 Point(7)