ある映画祭/吉岡ペペロ
 
一体どうしてしまったと言うのだ

ぼくはきっと正直に生きすぎ

疲れきったたましい入りの

肉のかたまりだったのだろう

客席はすでに埋まりはじめていた



観客は老夫婦から家族連れまで

さまざまなひとであふれていた

ぼくがステージにあがるとみんなは

静まりゆく波のように落ち着いていった

現地の言葉で棒読みで挨拶をすると

観客の笑顔がひかりになり影になった

ぼくは泣きそうになりながら

センチメンタルを払い除けようとしていた

つまらないことなんてなかった

つまらないことなんてないんだよ

すべてのひとに語りかけたくなっていた


一体どうしてしまったと言うのだ

ぼくはきっと正直に生きすぎ

疲れきったたましい入りの

肉のかたまりだったのだろう

客席はすでに埋まりはじめていた




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