あの日のマリアへ 2011/たま
 
ね・・、きれいでしょう・・・。


踊り子は楽屋のソファに胡坐をかくように両膝をたてて
物憂い女陰をひろげて見せた
ラッパのふくちゃんは太鼓腹をきゅうくつそうに折りた
たんでひたいに汗を滲ませて真正面から覗きこんでいた
あのころ
ぼくの視力は2.0
一秒でも見つめたらすべてがひとみの奥にやきついた

まだ熟しきらない淡いピンクの無花果を、両手の親指で
ひき裂いたようなかたちして
そこは
出口なんだろうか・・・、それとも
入り口なんだろうか
ひくい天井の蒼い息をはく蛍光灯のしたで、だるそうな
踊り子の体温さえ感じたけれど
ふしぎとセックスの匂いはしなかった


[次のページ]
戻る   Point(30)