安宿/まーつん
 
男の目
俺たちを見る 奴の目は
年老いていた その年齢以上に

カウンターの奥にある 消火栓扉の 非常灯
その赤い電光が 奴を照らし続ける 夜の太陽だった

俺たちは部屋をとる できるだけ 西向きの部屋を
カーテンの隙間から 射込まれる 朝日の矢が 
なるべく遅れて 届くように

古い黄ばんだ ベッドシーツに
また一つ 種が蒔かれる 

血の花を 咲かせる
種が 蒔かれる 

この場末の
安宿に

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