耳を塞いでも聞こえる声/佐藤伊織
今日もいつも通り
なにか新しいことがあるかって
そういってあたりをみまわしている
今日もいつも通り
ずっと泣いていたんだ
でも
涙なんてでるはずもなく
そうしていつものように
ただ歩いている
引き裂かれるような心の動揺もなく
ただ空気は暖かくて
ずるずると引き込まれて行くんだ
どこへだって?
わからないよ
わからないんだ
せめて一緒に殺してくれないか
そうたのめる仲間がいれば
僕はもっと
楽に生きられたのかな
雨なんてふらないし
どこにも行きはしない
どこまで歩いても
結局はここに戻っている
今日はなにをしていたんだか
何も覚えていないんだ
多分明日だって、明後日だって
そうやって何も覚えてはいないんだ
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