グレンチェックの太股 ★/atsuchan69
ちの飛び立ってしまった格子の上では何ら自己の存在理由を知ることもなかったが、果たして虫たちは格子の上をやみくもに動きつづけ、今さら「Θ」であるグレンチェックで覆われた太股の性別が男なのか女なのかも全くどうでもよいことだった。ましてモザイク画の尖塔の隠喩などロックフェラー・センターに飾られたクリスマスツリーに比べたら一体どれほどみすぼらしいものなのか。なだらかな砂丘を想わせる臀部の曲線に邪な想いを抱くこと、それ自体が生きていることの証なのだ。そして夜と昼の境に、どこの誰とも知れないグレンチェックの太股は、大勢の人と人の行き交うスクランブル交差点を足早に‥‥きっと誰よりも美しく、とびきり淫らに、グレンチェックの太股に群がる「Ψ」、「ζ」、「π」、また太股である「Θ」、「Θ´」とともに、宙に浮き、さも躍るように歩いていた。その歩みは、つよく、しなやかに、ただほんの少し‥‥危険な愛を孕んで。
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