正反対のショートストーリー/AquArium
西通りの角で手を振る
ここに辿り着くまでに
3回電話して5回鏡を見た
巻き戻ったストーリー
―深めにかぶった帽子の下
その凛とした視線の先に
何が映っているんだろう
って
考えてみても分かんないや―
ふと道草したくなるのはお互いさまだけど
君の道草はもはや長旅で
あたしはきっといつも叫ぶことになるんだろう
「ちゃんと戻ってきて」
君が嫌いなトマト
ほろ苦いビールの炭酸
漂うタバコの煙
すべてが愛おしくなる
オレンジの光が揺れて
あたしはトランス状態
完成した写真の出来はどうでもいいの
たまたま同じタイミングで
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)