すべて つなぎとめることは できないもの/ただのみきや
 
常緑樹が立ち並ぶ小高い場所で
わたしたちはうさぎの足跡を見つけた
雪原の輝きとはうらはらに
頬がかじかみ 言葉は出る前に凍りついていた
あなたはやさしいメロディーと悲しい歌詞の歌が好きで
よくハミングしていたが
いつも
風と見分けがつかなくなっていた

同じ場所に立っている
きょう うさぎの足跡は見つからない
白い風が横っ面を氷の粒で打ってゆく
あなたの面影も白く消されてゆく
あのメロディーもすべて
のみこまれ 風だけが 悲しげに歌い続け
大地は すべて無情にも引き裂かれ
散り散りになるもののために 
黙祷を捧げていた

戻る   Point(6)