社員旅行/
たにい
そのバスは新千歳空港から札幌へ晩秋の北海道を走っていた。
運転席の左上に設えられた小型テレビは夕方の子供向け番組を映している。暗くなりはじめた原野に時々人家の灯りが現れる。
帰りたい。
急に強い思いが込み上げてきた。
どこへ帰るんだろう。
妻と子が待つ東京のあの家へか。
老いた両親が暮らす故郷の家へか。違う。断じて違う。
あの場所に帰りたいのだ。懐かしく、暖かく、思い浮かべだけで涙が出そうになってくるあの場所にだ。
戻る
編
削
Point
(1)