夏の遠さ/塩崎みあき
 
お昼に家に帰ると
小さな声で
ただいまを言った

黒いスカートの
ペタペタの
遠くで
おかえりの声する
廊下は冷たく
長く
知らない絵のある
知らない声の
おかえりは
うらの畑から
いつも聞こえていた
こっぴーちゃんの
お墓のあたり
のねずみちゃんの
お墓のあたり

そこまでは行かず
ペンギンの歌を歌う
黒い髪の
クルクルの
ポワポワの

『青い皿』
に入った
シシトウガラシと
ナスと
ウインナーを
しょうゆで
食べている
ふたり
お昼のテレビ
しゅくだいはにっき
はやくしておかないと
ふたりの時間は
違うテンポで鼓動

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