寒いアロワナの星/根岸 薫
 
里におりて
息を吸ったひとの
肌はかなしい
湖の色に似て
過ぎぬ霧
のように

  ◆

いつもと同じ
列をつくり
くらべていた
  魚の
まなざしを含めて

  ◆

傘をさした人が
また
ひとり ふたり

くるしみ
群れて
野に出て はたらく
非常にしあわせである
(そのかけ声は
たしかにきこえていた)

  ◆

自転車に乗った
男が
湖底をゆっくりと行く
前に進むたび 腕の
骨が
少しずつあらわれる
(か細く)

  ◆

  おまえ

  手をつないでほしい

  ◆

絵をかいていた
ふるい
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