凪の日/まーつん
も
物足りないのだろう
この手を 罪で汚したい
善人ぶった仮面を かなぐり捨てて
眠気を誘うような 午後の街の静寂を
この喉が 破れるほどの雄叫びで ひっくり返してみたい
慎重に駒を進めてきた 人生という名の 双六盤など
一思いに このテーブルから はたき落してしまいたい
これが 中年の危機ってやつなのかな
あくせくと働く 勤め人のレールから外れて
寄り道できるほどの 財産もないのに
僕の心は今 長い旅に出たがっている
まだ目にしたことのない世界に 触れたがっている
何が欲しいのかは わからないが 何かを欲しがっているのは わかってるんだ
サンタクロースよ お前の橇に 乗せてくれ
つむじ風よ この枯れ枝の様な身体ごと 成層園まで巻き上げろ
ホオジロザメよ この心を飲み込んで 遥かな沖合まで 連れて行け
そしてこの 永遠の黄昏の中に演じられる 生という名の影絵芝居から
僕を 連れ去ってくれないか
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