裂け目から/nm6
 
1.口(先端)

隙だらけな口先が尖っていて、三日月だった。どうやらそれは動いている。晴れた夜も、駅の看板は傘をさして咳き込んでいた。メッセージが肩を軋ませあう街で、きみの尖ったり嘯いたりするだけの、声。しゃがれた臆病がドレスを着て、人ごみをヘイトしていた。「テトリスをしよう、このビルの電気をさ、なんか500人の召使いにつけたり消したりさせて。」先端が、あこがれる。ぼくは見ている。そんなパフォーマンスが、落下する光線の傍らで繰り返された。ただ隙だらけな口先が尖っていて、三日月だった。



2.耳(ぼくら)

ぼくら耳。応答せよ、応答せよ。洪水する空気が、過剰なる挨拶をいなたく告げ
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