悲しい特権/ただのみきや
家族を失うことは
心の一部が切りとられるということ
腕の一本麻酔もなしに切り落とされたと思ってみれば
その痛みの激しさと
後々続く消失感が
少しは想像できるでしょう
だけど心は人の目にはうつらないから
痛みは本人だけのもの
悲しい特権だ
子供を失うことは
地上で一番悲しいこと
心の中で一番柔らかく
あたたかい部分が切りとられて
急に寒々しく年老いてしまい
受け止めることのできない痛みを持て余して
あらゆるもの
過去までも歪めてしまう
だけど天国だけは身近になる
死をそれほど厭わなくなる
いやむしろ
人生の旅路の終わりが待ち遠しくなる
すでに心
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