縁側/草野春心
 
りとあらゆるものを
  少しずつ失くしていった



  冬の終りの莢かな光や
  肌を這う風の繊維
  些細な歓び
  ……少しずつ
  限られた手のひらの淵から
  さらさらと足下に溢して
  跡形も残らないほど、粉々に砕いて
  本当はそのことに
  二人とも薄々気づいていた



  愛することは悲しいことかな?
  どうだろう
  それとも僕たちは
  悲しさを愛していたのかな?
  時が流れいつか
  僕の頭がすっかり禿げて
  爺さんになってしまったとき
  縁側に置いた椅子に座って
  散ってゆく銀杏の葉を、一枚ずつ
  一枚ずつ
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