BORN TO LOSE/ホロウ・シカエルボク
のだ、半地下のバスルームは小さな死の瞬間に満ちながら夕方の太陽をかろうじて取り込んでいる、だけどそれはその小さな空間をすっかり渇かしたりすることは出来はしない、小さな死の瞬間で充満する空間は観念的な涙のようにどこかが濡れているのだ、俺はそこで身体を洗う、洗い続ける、湯をかぶるそばから身体が冷えてゆく、近くの堤防沿いを通過する浮かれたガキどもの声が、シャワーの音の隙間から時々聞こえてくる、在り方を変えないものたちは雄弁だ、その中で俺はどんなふうにして自分を誑かしている?
天井裏ではネズミが騒ぎ続ける、彼らもまた理由なき生のひとつ、身体に似合わぬ足音をとどろかせて真夜中を謳歌する、牙と尾が非常な貪欲を物語っている、腐ったものでも食べる、満腹して下しもしない、生きる姿勢だ、彼らは列を成して走る、足音を聞いているとそれがはっきりと判る
文字を打つ指先が次第に冷えてゆく、まだ明るいけど、まだ十分に明るいけれど、ゆっくりと夜が訪れようとしているのだ、俺は手を組み動かす、生体であるという熱がその中にある
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