夜を梳く指/木立 悟
籠から目を離したすきに
泡は部屋を水底にした
河口の伽藍
忘れられた灯に
落ちてくる星
水を孕み 裂き
横たわる
崖に丘に吼え
冷える溶岩
冬の裾野に祭はなく
見えない小さなかけらが跳ねる
月を透る月
あなたはあなたを
あなたから引き抜く
眠りの前の眠りに轟く
かがやきがかがやきへ
何ごとかを話している
川は流れずに
聴いている
のりしろにつまづき
冬はひらく
ひらかれたまま読まれぬものの
風と群れ
風車のように手は廻るのに
頭を撫ぜる心は吹かない
髪をさぐる指の音
首から下へ
流れる匂い
冬は赤みを増しながら
光に打たれ遠去かる
夜を夜に降らすもの
河口の星を聴いている
戻る 編 削 Point(2)