冬の観覧車/
塔野夏子
丘の上 灰色のあかるさの中に
観覧車は立っている
色を失くしたその骨格を
冷たい空気にくっきりと透かして
ただしずかに廻っている
ゴンドラのひとつひとつに
乗っているのは
かつてそこで生まれた記憶と
釣り合うだけの虚無だ
――ここはいつから冬なのか
もはや誰も問いかけることはない
聞こえない歌のように
観覧車は廻りつづける
やがて この景色いちめんに
雪ではないものが降りしきる
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