あるところに/ただのみきや
あるところに一人の男がいた
男は理想を見いだせない革命家であり
大義名分をもたないテロリストだった
彼にはため込んだ多くの武器があったし
破壊活動のためのノウハウもあった
それらが彼を一つの衝動へと駆り立てる
彼は目の前のスペースを埋め尽くしていく
広げられた破壊のイメージへ
真っ赤に熱した熟語を装填していく
幾重にも隠喩のトラップを仕掛けては
多くの人をまた自分自身をも殺傷するであろう
時限式の直喩を隠しておいた
すべてが文字で埋め尽くされたとき彼は
一瞬躊躇するが 静かに そう小川でも
のぞくように自分の作品に目を向ける
まるで己の存在を確認するかのように
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