はじめに謝っちゃおう!/花形新次
続けても良いのだと
しかし、それは、自らを怪物と思いこんだときと同じように
単に幼稚な脳髄が生み出した錯覚に過ぎない
男の皮算用を一切無視して
やがてクライシスは終息し、現実は涼しい顔で息を吹き返す
男は為す術なく、ただ茫然と
再び隆起する文明の亡骸を見つめるばかりだ
男は思う
こんなはずはない
こんなことで終わるわけがない
こんなことで終わっていいわけがない
俺が生き続けられる場所があるはずだ
俺が生き続けていい場所があるはずだ
夢を見た一瞬が永遠となる場所があるはずだ
男は思う
もし闇が正義となる、あの世界が現れないならば
もしあの混沌が二度と戻らないならば
俺自身の手で
この手で
この怪物の手で
あの闇を
あの混沌をもう一度創り出してみせようじゃないか
男は得心すると
家族から割り当てられた
四畳半の部屋を颯爽と飛び出した
勉強机の一番上の引き出しにあった、とっておきを
Gジャンの内ポケットに大切に仕舞い込んで
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