ひかりの冬、はじまり、ひとつ。/たちばなまこと
に暦を刻む
知らなかったくるしさ
泣き顔を引き寄せて
こぼれた砂粒が敷かれてゆく
腰を落とし向かい合う
背中から落ちる皮膜たち
寒さに服飾を纏ったまま
洗濯物と毛穴と麝香がたちこめる
ことばのはかなさ、つよさと、いとおしさ
からだの奥にしみわたり、鳴く
ふるい土地に立つ新しい生活
ひとつのはじまりに
ひとつの佇まいになれたこと
ひとつの思い出になる
永く生きるちからになる
首元のストールに手を添えて
霞む丘陵を縫って走る
月は冠を冬の星空に広げ
ふるさとの針葉樹に
まだ見ぬ雪の溜め息を飾っている
戻る 編 削 Point(20)