しずく すがた/木立 悟
窓に触れない雨があり
夜を背負い 立ちつくす
月が動く音
動く色
痛みは歌い
浮かび出る
既に内に居るかのように
外に外に居つづける
どこまで離れても
離れられない
この眠りには
槍が足りない
空腹を受け
己れではない場所を取り
ただ似姿をくりかえす
鏡ではなく くりかえす
失い光が
失い道を照らす
失くした名前を
呼びつづけている
風に触れない雨があり
夜に刺さり 目をふせる
水たまりの街を
踏まずに歩く
横に去る月
波を結び
水辺に厚く
むらさきを引く
風に数えられる指
髪のあいだ 木のあいだ
失いものが巡る雨の道
火と海と火を巡る道
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