午後の詩集/たま
 

ふたりは迷い込んだのかもしれない

佃島の上空を
白い鳥たちが海に向かって飛んでいく

 ねぇ、東京のカモメはどうしてあんなに高く飛ぶの?
 ウ・・ン、それはねぇ・・。
 ねぇ、海はまだとおいの?
 ウ・・ン、あ・・、そんなことない。すぐそこだよ。

 夕やけ雲・・、見れるかなぁ・・。

Hはわたしの返事を聞いていないようすだった
たぶん、自分自身に問いかけているのだろう
肩がふれたまま手をつないで
冬の灯りをまっすぐ受けとめたHの横顔を見つめた
冬がくるたびに
森はそうして美しくなってきたのだと思った
飛びきり美人じゃないけれど
わたしのなかでは、いち
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