白い本/……とある蛙
白い本 開かれた。たくさんの悲劇のあった年。
白い本 開かれた。たくさんの人生が消えた年。
白い本 開かれた。たくさんの想い出が断ち切られた年。
その本は神田神保町の文芸評論専門の古書店Y書林で偶然出くわした。Y書林は駿河台下交差点角のS省堂書店並びの靖国通り沿いにあるそれなりの老舗だ。その書棚は評論される作家別にあいうえお五十音順で整理されている。
さて、その本は っというと わ行の書棚の前の低い台に平積みされた未整理の古書の山に埋もれていた。ドンヨリとした店内にそこだけ鋭角的な空間、エッジの効いた色彩では決して無く、いわば崩れかかったバベルの塔
確かにスポットライト
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)