田村隆一論??フィクションの危険/葉leaf
るという二重性から生じている。一方で、読者は詩人の直接的な声を聞いているようにも感じるが、他方でそれが修辞によって歪曲されているようにも感じる。だから、読者は、一方で詩人の言葉をそのまま信じるように促されているかのように感じながら、他方で無批判に詩人の言葉を信じては騙されるように感じる。この点について、もう少し理論的に見ていこう。
1.1 意味論的フィクション
意味とは、言語と現実の対象との間の関係において成立するものである。言語と対象の関係という観点からフィクションの問題をとらえようとする立場がある。つまり、フィクションはどんな対象を指示しているのか。またフィクションの語る事実は現
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