田村隆一論??フィクションの危険/葉leaf
0.序論
詩は言葉の信用性を失墜させていないだろうか。詩は、一方で、表現主体の内面を最も率直に表現する媒体として使用され、もう一方で、読者にとって美しくなければならないという要求のために真実を歪曲することが往々にしてある。つまり、(1)思想や感情をありのまま表現するという動因と、(2)思想や感情をありのままではなく装飾をくわえて表現するという動因、この二つの動因が詩を書く者の表現現場では葛藤している。例えば、
春が転落する
このような詩行を考えてみよう。ある詩人Aは、春に急激な憂鬱に襲われ、まさに春そのものが転落するような実感を得てこの詩行を書いたとしよう。別の詩人Bは、とにか
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