ゼブラの思い出/salco
 
わかっていて
タクシーを呼ばせるか、蛇行の体で帰る

一度、そんなゼブラを
終電間際の急行から見た
線路二本を隔て
地下ホームからほぼ同時に出た各駅停車も
立っている乗客がいるほどだったが
斜めに伸びて据わっている周囲は
見事にがらんと空いていた

ゼブラがこよなくぼやくバアさん
奥様がまた偉い人で
スられたり落としたりで財布を失くすたび
買い置きに一万円だけ入れて渡すのだと聞いた
ゼブラも、仕事の話はひと言もしなかった
愚痴さえ、ただの一度もだ
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