ロマネスクの果て/済谷川蛍
を水面から伸ばしていた。炎のように熱い光線が、僕のてのひらを慈悲深く焦がした。胸の中に流れ込んでくる喜びが溢れ、太陽のように暖かい涙が止まらなかった。
*
数日前、僕はあることに気がついた。『ロマネスクの果て』の冒頭は、本当は冒頭ではないのかもしれない。これが僕が望んだ夢の情景であったなら、現実によって切り取られた続きは書けようはずがない。僕が生み出した「野村くん」という存在しない人物のように、妄想の産物であり、虚構であり、僕が生きているうちにこの世界に望み続け、死の瞬間に消滅する幽かな灯(ともしび)なのだ。
戻る 編 削 Point(3)