冬が訪ねてくる深夜/かんな
つよい
同時に恋をした
ひどく傷つき
またひどく傷ついたふりをした
愛した
また愛したふりをして
そして愛さずにいられなかったひとがいる
複雑に見えるものほど
内在するものはシンプルで骨組みはもろい
それがこころ
日常に埋没した
感性を拾い上げる行為は
表層だけにとらわれないという
しなやかさ
そう手帳に記せば
冬という事象が何らかのうつくしさへと
変貌をとげる
そのヒントになる
雪の結晶を握りしめれば
儚くも消えてゆくことを知ったとき
ひとつの形が手の内で
生き方を変えるような気がしてならなかった
ひとのこころは
強く誰かに抱きしめられたとき
溶けて形を変えるのだろう
それを
愛と呼べるなら
ことばはひどくうつくしい
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