冬が訪ねてくる深夜/かんな
 
つよい

同時に恋をした
ひどく傷つき
またひどく傷ついたふりをした
愛した
また愛したふりをして
そして愛さずにいられなかったひとがいる
複雑に見えるものほど
内在するものはシンプルで骨組みはもろい
それがこころ

日常に埋没した
感性を拾い上げる行為は
表層だけにとらわれないという
しなやかさ
そう手帳に記せば
冬という事象が何らかのうつくしさへと
変貌をとげる
そのヒントになる

雪の結晶を握りしめれば
儚くも消えてゆくことを知ったとき
ひとつの形が手の内で
生き方を変えるような気がしてならなかった
ひとのこころは
強く誰かに抱きしめられたとき
溶けて形を変えるのだろう
それを
愛と呼べるなら
ことばはひどくうつくしい



戻る   Point(16)