冬が訪ねてくる深夜/かんな
 
ポケットから
手帳を取り出す手が冷たい
ことばを整理する
その過程で
冷えてゆくものも温まるものもある
あられが窓をしきりにノックする
冬が訪ねてくる深夜

うまれてきたことに感謝し
そして死にゆくことに後悔するのか
そんなことはいまだに考えないでいる
ただ季節が
あまりにうつくしく過ぎ去っていくので
歳月を数えることに夢中で
いつの間にか
歳を重ねてしまったのだ

過去は置き去りにしてきた
そちらの方が生き易い気がしたからだ
今というのは自由だ
現在は
とらわれない
とらわれずに生きることができる唯一の
思考のひとつ
想像という武器をもつひとはつよ
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