無題/葉leaf
 
海はどこに隠れた? こんなにも空は涼しく、こんなにも山は遠慮しているのに。/それが教授と愛人との踏みならされた日々の果実のような疑問だった。/僕は居てはいけない人間なんです。あらゆる部屋、階段、交差点、肉体、それが僕を許してくれないのです。それは羞恥と言ってもいい。あるいは、執着、焦慮。/学生は低いソファーに居心地悪そうに座りながら、ふと天井のさらに上部の構造の、その隙間に圧倒されて転倒。/教授の研究室の本棚は金属製で、木製であることと決闘したかった夜に運び込まれた。本棚に次から次へと並べられる数学の本たちの体温に、蛍光灯の光はそっと思いを寄せた。/私、私の感情を見失ってしまったの。愛と憎しみだけ
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