視線恐怖症の人形/そらの珊瑚
リリィ
あの娘は私のことをそう呼んだ
いつまでも友達よって
つぶらな瞳が笑ってた
毎朝
私の髪を象牙色の櫛で梳かし
樫の木の椅子に座らせてくれる
あの娘は私にいろんなお話をしてくれた
「戦争が終わったら
一緒におうちへかえりましょうね」
暗い隠れ家で
誓ったものよ
固くなったパンと茹でたじゃがいも一個で
息を潜めて生活していた
「戦争が終わったら
一緒にピクニックにゆきましょうね」
野原に寝転んで
青い空を眺めるの
狭い隠れ家で
約束したものよ
ある日
あの娘も
一緒に暮らしていた人々も
この隠れ家から出ていった
あの娘は一緒に連れてって
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