まだ眠らない秋の寝顔/木屋 亞万
世界が死んでいく
街は秋に包まれている
その上空で冬が旋回しており
朝晩につめたい息を吹き込んでいる
秋の煌きは陽射しのやさしさゆえ
イチョウは金色に輝き
紅葉は真っ赤に燃え上がる
枝が鮮烈な色を纏って膨張する
冷え込んでいく街にあって
色彩はなお鮮やかに
冬眠前の樹木の放つ最後の光
同じように春に
枝を桃色に膨れ上がらせたサクラは
幼い葉桜の頃をとうに過ぎて
今では赤い大きな一葉
ちらほらと枝から切り離され
根元に輪になってたまっている
その疎らに残る橙の葉に
自然が持つありのままのバランスを感じる
南天も葉を朱に染めて
つぶらな赤い実が
や
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