殿岡秀秋小論/葉leaf
 
きに自然的に反応する、その反応の仕方が多種多様な比喩だったのだ。

3.おわりに

 殿岡はなぜ詩を書いているのか。それは、やはり愛するものと「見捨て、見捨てられる」関係に立たざるを得ないという傷が原因ではないのか。愛するものとは、一番は母であろう。母から見捨てられ、母を見捨てなければならなかった傷。そして自分の人生というもの。自分の人生、特に少年時代を慈しみながら、その人生が過ぎ去っていくのを見送らざるを得ないという傷。だが、彼は科学的にその傷を治療しようとはしない。彼はむしろ、その柔軟さゆえに、その傷と和解する道を選んだ。傷を克服するのではなく、奔放な想像力・比喩を駆使することでその傷を薄めると同時に、その傷の存在を承認した。殿岡の詩は、彼の傷との和解の産物である。

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