殿岡秀秋小論/葉leaf
0.はじめに
殿岡秀秋は弱い人間である。だがこの弱さは詩人にとって必要な弱さである。まず、殿岡は武装しない。思想や理論や謀略や機知をことさらにめぐらすことをせず、時間や連想の流れの中に素肌で漂い、健やかに手足を伸ばす。武装するということは、外界に過剰に働きかけることであり、また外界から過剰に身を守ることであり、そして感性の自由を大幅に失うことである。外界との親愛に満ちた自由な交渉は、武装しないことで初めて可能になるのだ。次に、殿岡は受動的である。自らに詩を語らせるというよりは、むしろ自らによって詩を語らせられているのである。詩を書くことの気負いが詩に不自然な突起や異物感を生じさせることなく
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